7月23日、青山のダイヤモンドホールで、リカルド・コタレッラ氏来日記念 “ファーストボトル”発表会&テイスティングセミナーが、㈱オーバーシーズにより開催されました。
コタレッタ氏は現代のイタリアを代表するエノロゴ(醸造家)の一人。数々のプレミアム・ワインを手掛け、2000年度ガンベロ・ロッソ誌の「エノロゴ・オブ・ザ・イヤー」にも輝いています。
そんなコタレッラ氏が初めて手掛けた日本のワイン、それが甲州“ファーストボトル”。㈱オーバーシーズと大和葡萄酒の協力により生まれたこのワインは山梨県産の甲州を100%使用。ステンレスタンクで4カ月の熟成を経て、初ヴィンテージとなる2013が発表されました。
まずは氏から、「甲州というブドウ品種は世界に通用する品種」、そして「甲州を使った日本で一番いいワイン、かつ世界レベルで評価されるワインを作りたい」という力強いお言葉がありました。今回、甲州を手掛けるにあたっては、品種の特徴である豊かな香りを生かした構築感のあるワインを目指されたそうです。テイスティングしてみると、色はピンクのニュアンスを感じる淡いレモンイエロー。ハーブやライム、レモンなど柑橘系の豊かな香りが心地よく、酸味と果実味のバランスが素晴らしい、しっかりとしたワインにしあがっていました。特に際立っていたのは、強い酸からくるキラキラとした宝石のような輝き。この酸を生かして、将来的には木樽による長期熟成にもチャレンジしてみたいと熱く語っていました。氏の手掛ける甲州が、今後どのように発展していくかが非常に楽しみです。
甲州のテイスティングに続いて、やはりコタレッラ氏が手掛けるWRT(Wine Research Team)のワイン5種類をテイスティングしました。WRTは酸化防止剤、そして防腐剤としてワインに添加されているSO2(二酸化硫黄)を使用しないワイン作りのプロジェクトで、現在イタリアの28のワイナリーが参加しています。
氏がこのプロジェクトを手掛けて10年になりますが、初めは様々な問題に直面し、ワイン作りをあきらめかけたこともあるそうです。数々の試行錯誤の結果、ブドウの品質を房ではなく実単位で行うことに加え、ワイナリーの徹底した衛生管理の実施によりSO2を添加しないワインを作り出すことに成功しました。
氏によると、SO2というのは我々人間が病気になったら摂取する薬のようなもので、ブドウが完全に健全であれば必要がないものであるとのこと。そして、このような健全なブドウのみから作られているからこそ、本来のブドウの特徴をはっきりと感じるワインにできあがるのだそうです。
テイスティングしたワインは下記になります。
- FALESCO LA DISCORDIA UMBRIA IGP 2013 ヴェルメンティーノ100%
- FALESCO LA DISCORDIA UMBRIA IGP 2012 メルロー100%
- SAN PATRIGNANO LA SPALLATA ROMAGNA SANGIOVESE DOC SUPERIORE 2012 サンジョヴェーゼ100%
- CASTELLO DI CIGOGNOLA SCALEO OLTREPO PAVESE DOC BARBERA バルベーラ100%
- LA MADELEINE SFIDE CABERNET FRANC IGT UMBIA カベルネ・フラン100%
実際にテイスティングしてみると、確かにどのワインも味わいが非常にクリアで、迫ってくるエネルギーが感じられました。特に「メルローの魔術師」と言われるコタレッタ氏だけあって、メルローの華やかさ・豊かさには圧倒されました。また、青臭いことが多いカベルネ・フランも、タンニンがありながらフレッシュで飲みやすく、嫌みのまったくないワインに仕上がっていたことに驚きました。
氏は、テイスティングでいちばん重要なのはブドウの品種と栽培された土地の香りを感じることと最後に話されていましたが、その言葉通り、品種の特性と土壌の特性が素直に反映されたワインだと感じました。
セミナーのあとは、イタリアソムリエのメンバーでコタレッタ氏を囲んで記念撮影をさせていただきました。とても気さくな方で、日本でイタリアソムリエが活躍していることを大変喜んでいたのが印象的でした。2時間という短い時間でしたが、コタレッタ氏の真摯な人柄に触れることができる、充実した内容のセミナーでした。
written by Kumiko Koyama(Sommelier AIS)