ワインサーチャー6月11日に発表されたKerin O’keefの記事は、赤ワイン醸造で発酵で果梗(ブドウ房の軸部分)を使うか否か、についてであった。
記憶に間違いがなければ、一般的には、果梗を使った発酵は推奨されていないものである。しかし、多くの人が記憶にあると思うが、Châteauneuf-du-Papeシャトーヌフ=デュ=パプの発酵も、2つのスタイルで行われていた。クラシックタイプ(伝統的なタイプ)は果梗を残したまま、一方イノベーションタイプは、除梗してから行うタイプ。シャトーヌフは、果実味がありシロップのよう、そしてしっかりとしたアルコールがバターのような感覚を包み込み、新たな世界を感じさせるが、はや飲みのタイプ。一方かの”パプ”は、バランスと発展の変化がとても控えめではあるが、年を重ねるごとに、その調和とエレガンスを徐々に作り上げていくタイプ。いずれにしても二つのスタイルいずれも、品質を感じさせるものである。
今日、この「果梗を使うか否か」の議論がなされることは、単純に各生産者のフィロソフィーによる選択である、という説を複雑にしているかの様に思える。ブルゴーニュでは、果梗を使う事により特徴をだす醸造の傾向と、ワイナリーで静かにゆっくりと発酵を行う傾向とに別れている。Domaine Louis Rémy ドメーヌルイレミーのシャンタルレミー氏は、果梗を使うタイプであることを宣言している。グランクリュドラロッシュと、シャンベルタンで部分的にではあるが、この手法を使っている。もちろんその選択によりボディーやエレガンスが損なわれることはない。Domaine de Montilleドメーヌドモンティーユでも、収穫年により、量に変化はあるもの果梗を使っている。それにより、精錬の期間にフローラルな香りと、スパイスの香りが増すと言われている。
ブルゴーニュに、”果梗”派がいれば、”除梗”派もいる。Comtes Lafonコント•ラフォンは、両方を試した結果、果梗を使うほうが表現力に劣るとの結果に辿り着いたのである。フランスだけではなく、ニュージーランドでもPino Noirを使ったテストが行われている。イタリアでは、バローロとバルバレスコなどで同じような状況がささやかれている。
アンジェロガヤは、収穫年2009年、畑により、果梗にも非常に成熟が見られたため、取り除かれる事なく発酵が行われた。バルバレスコであった。そして結果として、非常にすぐれたスパイス香、アルプスのハーブを思い起こさせるバルサムの香りが得られた。
フェルナンドプリンチピアーモ では、果梗の利用は畑での自然の栽培が最優先、その中で果梗と果実に完璧な熟成が訪れたのであれば、果梗はノーブルなタンニンを含む事が可能である。
バローロのAntinori、Prunottoでは、Colonnelloの畑で果梗を使ったことがかつてある。この年は、葉軸のタンニンとエレガンスと繊細さが、信じられない程の奇跡と言っても良いバランスで熟成したのである。「一歩間違えば、タンニンは青々しい味とほろ苦さを引き起こしていただろう」と。
つまりは、まだ実験段階であり、まだ可否を問う段階にも至っていないのである。しかしながら、醸造家Donato Lanatiはこう言っている「気候条件が変化しつつある。太陽と暑さがさらにブドウ畑を照らしつけ、ブドウは糖質が凝縮しすぎ、それによりワインのアルコール度数が更に高くなる(注 アルコールは万能特効薬ではないのである)。果梗を使う事はその一つの解決策になりうる、なぜならアルコールを吸収することができるのである」
現時点では、シェークスピアの名言とおなじくとどまっておくことにするとしよう「果梗をつかうべきか否か、それが疑問だ….」