多くの人がKoshu(甲州)種からできた日本産ワインについて論じている。Koshu種は最も重要な土着品種(こう言ってもいいだろう)として、当然のように、神秘的かつ神話的光輪に包まれて姿を現した。歴史(ひょっとすると伝説?)は718年まで遡り、その歴史は仏教や、ワイン醸造ではなく、むしろ治療薬としてなど、いくつかの信仰的観点が入り混じっている。一つ確かなことは、日本人のソムリエ仲間たちが我々に報告してくれる、収穫やワイン造りのシステムをより良くしようという試みが続けられてきたこと、そしてそれらはまだ発展途上にあるということである。
我々はClub AIS Japanの創設に向けて基礎作りをしていた2001年に既にKoshu(種)ワインに巡り逢っており、かなり意表を突かれる二つの味わいの表現を持つこのワインに驚いたのだった。アーモンドの外皮を感じさせる苦い香り、未熟な桃かはたまた青い葉のような印象ももった。味わいとしては、酸味を思わせるような感覚と野生の桃の皮をよく思い出させるようなほろ苦さが相乗効果となって合体していた。私たちはその後何度も再評価をしたが、印象に大きな変化はなかった。
大きな好奇心が私たちを襲ったのは、First Bottle Koshu 2013のテイスティングに立ち会ったときだ。「どうせ大したことないんでしょ!?」多くの人がそう思ったに違いないが、このワインは、リッカルド・コタレッラ(Riccardo Cotarella)が手がけているのである。ワインをたしなむ人にとってはもはや、彼について説明する必要はないであろう。しかし、今回のプロジェクトは、取り上げるに値するであろう。甲州を使ってワイン造りをするのは、簡単なことではない。醸造の結果が、今までの甲州を使ったワインとあまり変わらないものであれば、あえてここで取り上げる必要はないのだ。
First Bottle Koshu 2013のテイスティングは驚くべきものだった。ようやくこのワインが持つ最大限のシンプルさを引き出し、さらにこれ以上のポテンシャルを求めるのは不可能であるというところまで到達した。透明感の中に清らかさと、ダイヤモンド散りばめたような明るい緑の清澄さの中にあるキラキラとした輝きは、このブドウの性質そのものである。
ついに、香りも苦みと強みのバランスがとれた状態に到達したといえる。青々しさを感じさせる柑橘類の皮のような香りをまとい、時とともにオリエンタルなエッセンスを感じさせるほろ苦さに変化していくのである。味覚については、酸味のポテンシャルが相撲力士のように次から次へと押し寄せる、このパーソナリティーのある酸味を舌全体が感じ取り、土俵際でまろやかさと拮抗するかのようなバランスを、意図していたように引き出す事に成功している。
我々はリッカルド・コタレッラの甲州と、ボトルにある彼の写真だけに留まらない、その背後にあるマーケティング術を称えたい。なぜなら、イタリアワイン醸造の技術の賜物であるもいえるからだ。このワインの成功という勝利の女神はコタレッラ氏一人に口づけをするのではなく、イタリアワイン界にとっての勝利ともいえ、世界のなかでの、イタリアワイン界の名刺代わりにもなるといえる。このワインの背景で行われた仕事は、イタリアのブドウ栽培、ワイン醸造に価値を与え,この先につながるものともなっている。
先進の技術を取り入れるのが日本という国であるならば、我々イタリアは素晴らしいワイン造りの歴史のなかで培ってきた伝統の技術を誇りにしていきたいものである。グッドラックKoshu! (訳:稲田周子)